最近の旦那、やたらと楽しそうに“ふらふら”している。
いや、ワシ(猫)から見ても、あれは間違いなく「幸せそうなふらふら」だ。
かつての旦那は、パリッとスーツでバリバリ。
組織の一枝として、それなりに整えられ、「まあ、悪くない位置じゃないか」と本人も思っていたらしい。
でもある日、ふと――
「パチン」って音がした。
まるで盆栽の枝のように、
気づけば会社にスッと剪定されていた。
次の芽に光を当てるために、静かに切り落とされた枝。
誰にも責められず、誰にも褒められず、ただ風に吹かれて揺れている。
「もうちょっと、伸びてみたかったな」
そんな余韻を心に残しながら、旦那は50代を迎えた。
今は、島で三女とふたり暮らし。
朝は誰に急かされることもなく弁当を作り、
空を見上げて雲を追い、
「カルカンパウチ18歳から」を食べるワシに「ねえ」と話しかけてくる。
かつての“定位置”を失った旦那が、
いまは“自分のかたち”を、少しずつ伸ばし直しているように見える。
島という、ハンデにも思える場所。
でも、
自然も、人も、そっと心に寄り添ってくれる。
もう、まっすぐ整えられた人生じゃなくていい。
ちょっと曲がっても、いびつでも、
自分で伸びたい方向に伸びていく――
そんな生き方が、きっと、これからの正解なんだろう。
50代からは、キャリアの檻を自分で開けて、好きな道に散歩に出るのだ。