ニンゲンたちのゴタゴタ

ニンゲンたちのゴタゴタ

🐾 長期リゾートな働き方

旦那(=飼い主)は、ある日ふいに“島送り”になった。といっても、罪人扱いではない。ちゃんと辞令のついた転勤である。 その知らせを受け取った日の旦那は、いつもより歩幅が小さかった。スーツのポケットからは、くしゃくしゃになった紙切れがの...
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🐾 居場所は、机の上にも作れる

あの日――旦那(=飼い主)がMacBookを買って帰ってきた日から、ぴったり1か月が経った。その日の旦那は、まるで長年探し続けた宝物をやっと手に入れた少年のように、浮き立っていた。宅配便の箱を開ける手つきは慎重で、パリパリと音を立ててテー...
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🐾 「明日」

作家、井上光晴が書いた小説『明日』は、長崎に原爆が落ちる前日の市民生活を、静かに、淡々と描いている。舞台は長崎市とその周辺。市場で魚を選ぶ人、井戸端で水をくみながら笑い合う奥さんたち、畳の上で昼寝する子どもたち、空き地で竹馬に興じる声――...
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🐾 会議で失敗?ズレた発言

旦那が地域の会議から帰ってきた。玄関のドアが開いたとたん、ため息ひとつ。 リビングに入っても、いつもの勢いがない。椅子に腰をおろすと、静かに言った。「うーん……なんかズレてた気がする」 本人としては、場の空気を読みつつ、建設的...
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🐾 卒業を目標に

夏休み。朝から三女ちゃんの部屋は静かで、ワシ(=ねこ)は気になってそっと覗いた。布団にもぐって、顔だけちょこっと出してる。……目が笑ってない。 どうやら、ここまで張りつめていた糸がぷつんと切れたようだにゃ。島の高校に転校して、新しい...
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🐾ステルス減量

このあいだ、旦那がネット注文中に「…あれ?」「あれぇ?」とつぶやいていた。 たいてい、その「あれ」は、財布がないとか、風呂の栓を閉めたか忘れたとか、まあ人間によくある“記憶の迷子”なのだが、今回はちょっと違った。 「おかしいな...
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🐾街が変わる寂しさ

本土に一時帰省した旦那。 街は、かつて暮らしていた場所だったのに、その面影は少しずつ、静かに消えていっているらしい。「100年に一度のまちづくり」と銘打たれ、バス停は移動し、歩道橋も姿を消し、駅の場所も変わった。代わりに、立派な施設...
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🐾五色うどんと、上司の背中

本土の港にある、ちいさな立ち食いうどん屋。改札のすぐ横で、フェリーの時間まで、ちょっとだけ「ほっ」とできる場所。 目立つ位置に掲げられたメニュー看板には、「五色うどん」の文字。赤・黄・白・緑・茶――五つの具材がのっていて、栄養も、縁...
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🐾「正しさ」より「らしさ」

精神保健福祉士の資格を目指す奥さんは、ただいま通信教育で勉強真っただ中。このあいだ戻ってきたレポートの添削結果に、家族みんなで「おお〜」と声が揃った。 テーマは「統合失調症の陽性症状が落ち着いたあとの社会復帰」について。しかも「社会...
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🐾 水の風と、少しずつの歩み

この日は家族3人で滝を見に行った。高速道路のパーキングエリアで、ひと休み。そのとき、旦那のスマホに教頭先生から電話がかかってきた。 対応したのは奥さん。助手席で、穏やかにやりとりしていた。新学期に向けての話だった。 ――学校の...
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