🐾 ほめないでください?

ニンゲンたちのゴタゴタ

同居の三女は、極端に人の目を気にする。
「できれば、誰の目にも止まりたくない」が口ぐせ。
「透明な存在でいたい」というのが理想らしい。

…ネコか?

原因は、前の高校でのつらい経験。
授業中に起立して指され、ちんぷんかんぷんの回答をしてしまったとき、
クラス中に「はあ?」「何言ってんの?」とサラされたという。

何度も。繰り返し。
あれはもう、心の地層にめり込んでいるらしい。
だから、「目立ちたくない」「先に出たくない」というのは、完全なる防衛本能だ。

でも、これ、三女だけじゃないっぽい。

旦那が以前、大学で准教授をしている友人に頼まれて、
学生向けにゲストトークをしたことがあるらしい。
授業前、その友人が念押ししてきた。

「頼むから、学生をあんまり当てないでくれ」
「あと、発言しても、ぜったい褒めないでくれ」

なにそれ!?と聞き返すと――
「発言した学生が褒められると、周りから“あいつ、出しゃばり”って目で見られるから」
「“目立たないように努力してる”学生もいるんだよ」

なるほど、陰の努力の時代である。

そのとき紹介されたのが、『先生、どうか皆の前でほめないでください』という本。
副題は「いい子症候群の若者たち」。

――人に迷惑をかけない
――場の空気を読みまくる
――「いい子」でい続けることが最優先
――だからこそ、ほめられると浮く。むしろ、いじめのリスクになる

…そういう時代。

どうやら今は、「自己主張」よりも「自分の輪郭を消す技術」のほうが重視されているらしい。
ワシは押し入れで消えてるから、その技術ならけっこう自信あるけど。

でも思うのだ。

褒められたくないわけじゃない。
目立ちたくないわけでもない。
ただ、「安全な場で、安心していたい」だけなんじゃないか。

それが今の子どもたちの「生きる術」だとしたら、
大人がすべきなのは、「無理に引っ張り上げること」じゃなく、
「押し入れの隣にスペース空けてあげること」なのかもしれない。

まあ、ワシの押し入れはすでに定員オーバーなんだが。

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