平日の朝6時半。
毎日、きっちり旦那が起きる。
誰に言われたわけでもないのに、三女の弁当をいそいそと作っている。
この姿を、5年前の自分が見たらひっくり返るんじゃないか。
当時の旦那は、ネコで言えば“自力で毛づくろいできない”レベルのダメっぷり。
靴下すら履かせてもらう気満々の、全自動受け身型・昭和の残り香だった。
それが原因で、奥さんがついにブチギレ。
あれはたしか5年前。大喧嘩の末、半年近く、家庭内ミュート状態が続いた。
その間、旦那はなぜか黙って行動に出た。
朝起きて、当時高校生だった長女と次女の弁当を作り、風呂掃除をし、掃除機をかける。
誰に頼まれたわけでもないのに、ひたすら、もくもく、もくもく、もくもく。
ネコですら途中で飽きるくらい、黙々とやっていた。
信用というのは、簡単に積めず、すぐ崩れるものらしい。
旦那もそれが骨身に染みたのだろう。
今や、島の静かな朝に、三女のためにタマゴを焼き、ウインナーを転がす姿は、
まるで“家事スキルで改心した人”の教材ビデオのよう。
今日もせっせとキッチンに立ちながら、ぽつりとつぶやいた。
「あー、あの時やってたのが生きた…」
うん、まあ、そうにゃ。
でもワシとしては、当時の“風呂掃除に感情を込める男”もけっこう見ものだったぞ。
人間ってやつは、失ってから気づき、黙って行動し、
だんだん、弁当がうまくなる生き物なんだにゃ。
ワシはというと、弁当には興味がないので、
夢の中でカルカンを待つとする。