🐾二三作品にしみじみ

海風のテリトリー

旦那が、あの山本二三さんの作品展を見に行ったらしい。

『天空の城ラピュタ』『もののけ姫』『火垂るの墓』――
日本中の“あの景色”を描いてきた、美術の匠である。

帰ってきた旦那、開口一番。

「いやあ、アナログって、いいよな…」
何をいまさら、とワシ(猫)は思ったが、どうやら胸にくるものがあったようだ。

二三さんはビデオで、アナログをこう語っていたらしい。

「アナログとは、ゆったりとした時間のことなんです」

猫の生活のこと?

旦那いわく、会場には“描きかけ”の空や、
“途中の線が見える”森の風景があったらしい。

それら全部が、“完成”ではないけれど、
そこにある空気が、ふわっと“生きている”感じがして、じんときたんだとか。

そして、ふと気づいたらしい。

「島の暮らしって、どこか二三さんの絵に似てるな」

旦那がそうつぶやいた。

たとえば、時刻表はすかすかでも、
そこにいる人たちは“余白”の中でつながっている。

魚をもらったから、おすそ分け。
廃校になった図書館では「本、ご自由にどうぞ」。
港の立ち飲み酒場では、常連に交じって旅人がしれっと混ざってる。

全部、予定調和じゃない。
でも、どれも「切れてない」。

アナログ(Analog)は「連続」や「つながり」。
デジタル(Digital)は「区切り」や「バラバラ」。

完璧じゃないけど、どこかぬくもりがある。
この島の“ゆるいつながり”は、きっとアナログなんだなあ――と旦那。

そう言いながら、

「これも、なんか“連続”やな」と言って、
ワシの皿に、いつもの「カルカン18歳から」をきっちり盛る。

――ふらふらしてるように見えるけど、
案外、しっかりと地続きでつながっているのが、この人間たちの営みなのかもしれない。

そして今日も、ワシは押し入れで、アナログにまどろむ。

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